品性の欠片もない

自分の説明は自分にだけすればよいです

反出生主義と仏教の相性は悪いんじゃないか

タイトルをもう少し正確に言うと、反出生主義と仏教の輪廻説は相性が悪いんじゃないかと思います。輪廻説に従うならば、たとえ人類が滅亡したとしても、我々は何らかの別の生物に輪廻転生してしまうからです。人間を産まなかったとしても、我々は生の苦悩から解放されることはありません。

仏教的見地からすると、生の苦悩から逃れる術は唯一、解脱に至ることです。しかし、解脱という概念を理解し、解脱に向かって修行できるような知性を持った生命というのは、少なくともこの地球上には人類しか存在しません。とすると、人間を産むことは、解脱に到る可能性を持つ生命(輪廻の当体)を増やすことにも繋がる「善い」ことなのではないか、という反出生主義とは真逆の立場を導くこともできるかもしれません。

あくまで仏教の輪廻説は「物語」に過ぎない、という理解をするならば、反出生主義と仏教は両立します。また、解脱を真の反出生の達成と見るならば、仏教も反出生主義的であると言えるでしょう(特に初期仏教や上座部仏教)。しかし、少なくとも現在の反出生主義については、仏教との相性はあまりよくないのではないか、という疑問はそれなりに正当なものなのではないかと思います。

 

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

  • 作者:魚川 祐司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/04/24
  • メディア: 単行本